
マルバノキ最大の魅力は、その名の通りの丸みを帯びたハート型の葉です。風にそよぐ姿は非常に愛らしく、庭にやさしく穏やかな雰囲気をもたらします。春の芽吹きから夏の深緑、そして秋の紅葉まで、季節の移ろいとともに葉の表情の変化を楽しめます。

コンパクトで、自然に樹形が整う
最終的な樹高は2〜4mほどの落葉低木で、成長も緩やかです。そのため、スペースが限られる都心の庭でも圧迫感なく管理することができます。また、人工的に刈り込まなくても自然と株立ち状の美しい樹形にまとまるため、剪定の手間がほとんどかからないのも嬉しいポイントです。

一年越しに熟す、驚きと発見の「実」
マルバノキの面白さは、さらに続きます。秋に咲いた花は、すぐには実になりません。枝で冬を越し、春を迎え、約一年後の翌年の秋にようやく実が熟すのです。
このこげ茶色の小さな実(朔果(さくか)といいます)は、熟すと「パチン!」と音を立てて、中にある黒く艶やかな種子を勢いよく飛ばします。これは、子孫を遠くへ運ぶための植物の知恵。忘れた頃にやってくるこのダイナミックな生命の営みは、大人にも子どもにも、自然の不思議と面白さを教えてくれます。
「去年のあの花が、今こうして種を飛ばしているんだな」と、庭の木を通じて時間の大きな流れを感じられるのも、マルバノキを育てる醍醐味と言えるでしょう。

マルバノキのお花
このように、マルバノキは美しい姿で私たちを癒してくれるだけでなく、「花」と「実」がもたらす一年越しの物語によって、庭への関心と愛着をより一層深めてくれる、非常に魅力的なパートナーなのです。
秋の貴重な蜜源である
マルバノキは10月〜11月にかけて、他の花が少なくなる時期に開花します。この時期は、越冬の準備をするミツバチや、活動の終盤を迎えるハナアブなどにとって、非常に貴重な蜜や花粉の供給源となります。